先日はCAの初期訓練の概要について書きましたので、今日は具体的な科目について書きたいと思います。
というか全部まとめるつもりだったのですが、思ったより長くなったので別記事にしました。
いつも言っている通り、会社によって履修の順番や内容は違いますが、概要はこんな感じです。参考までに。
注意)この項目ではいろんな会社の訓練内容を、書ける範囲で一般化して書いています。CAになったらだいたいこんな感じのことをカバーするという感じです。特定の会社のことを書いてはおりませんが、万が一機密事項に触れる部分がありましたらお手数ですがご一報ください。
1. Induction
日本語にするの難しいのですが。。。まあ本格的な訓練に入る前の、序章というか、会社・訓練スケジュールに慣れてもらうための説明会的な感じです。会社によりますが、
- 契約書のサイン、説明
- お給料や福利厚生の説明
- 社内向け会社説明
- 訓練のスケジュール、do’s and don’t (していいこといけないこと)
- 会社のルールや決まり事、SNSでの投稿制限等
- その国の文化について最低限知って欲しいこと(イスラム系だとRamadan等)
- 多文化組織においてどのようにコミュニケーションをとるか
- Managementの偉い人がきて演説する
- バッチメイトと仲良くなるための自己紹介や簡単なゲーム等
- 銀行口座の開け方、申請書(外国ベース)
- 会社のIDを作るための写真、書類提出
- 健康診断
などです。基本聞き流していい、よくはないですが、まあ訓練生活・その国の文化になれるための説明会的な感じです。この間は大した宿題やテストの合否に関する授業ではありませんので、リタックスして受けられます。
この間だけは。。。笑 ちなみに会社によって数日だけinductionのところもあれば、1週間以上することろもあるみたいです。
健康診断は、ここで落ちたら身体的にunfitとみなされて国に返されます、もしくは契約が切られます。なので健康診断は意外と肝です。逆にいうとここをクリアすると一安心。
2. SEP (Safety and Emergency Procedure)
これがぶっちゃけCAの訓練の肝で、最難関です。逆にここをパスすると、他の科目はここほどはボリューミーではありません。
これはまあ、緊急の際にどう対応するか、行動するか、客を脱出させるかの会社のプロトコルを細かく習います。
飛行機という上空40,000フィートという閉ざされて外部から助けが来れない密封空間の中で、どのように行動すべきかを知識、実技両方でお勉強します。
もう一度言いますが、ここが一番大事です。
CAは保安要員ですので、ここをきちんと頭に入れていないと、数百人のお客様の命を危険に晒すことになります。なのでどの会社もここには重点を置いています。
余談ですが、飛行機は緊急時の際に90秒で乗客乗員が全員脱出できるように設計されています。そのシステムによって、会社も独自のプログラムを作っています。
実際にどんなことを習うの?という感じですが、
- 緊急事の状況の種類:着水、減圧、地上での脱出、機内での火災 etc…
- 上記に保安要員としてどう対応するか、どうパイロットに知らせるか
- 上記の状況になった際の、機内でのサイン(アラームなど)、機内アナウンスなど
- 緊急脱出の際のマニュアルデモ
- パイロットが何らかの理由でincapになった場合の対応
- 緊急脱出の際のコマンド(お客様を誘導するために叫びます、叫ぶ言葉が決まっている)
- スライドの膨らませかた
- スライドラフトのドアからの切り離し方
- どの機材、タイプのドアが、スライドのみで、どのタイプがラフトつきか
- 脱出の際に持っていくべきEquipment(器具)とは(例えばメガフォンや自衛隊などに位置情報を知らせる機械など)
- 各スライドに最大何人お客様を乗せされるか
- スライドラフトの使い方、雨よけ布の貼り方、サバイバルの仕方 等
- 減圧の際、マスクの酸素がどれくらい持つか、酸素ボンベの仕様の仕方
*スライドとは、緊急脱出の際に膨らむあの滑り台のことです。これが、ドアにつけたままのタイプか、切り離してボートにできる着水でも使用できるタイプか覚えなくてはなりません。
3. SOP (Standard Operating Procedure)
SOPはいわゆる、通常のオペレーション、常務の際の決まりごとというかルール、プロセスを習います。これもSEPと同じくらい大事です。
そしてこっちの知識の方が乗務してから日常的に使います。SEPは緊急時のプロトコルで、SOPは通常のプロトコル、です。
例えば、
- 自分の割り当てられた責任のゾーンはどこか
- 自分のゾーンのsafety equipmentのチェック、(消化器、懐中電灯など)
- トイレ、ジャンプシート(クルーの座る席)、お客様の座席チェック、インターフォンチェック、ドアのチェックの行い方
- 機内に不審物があるかどうかのチェック方法
- アーム・ディスアームの仕方、そのアナウンス
- キャビンセキュアの仕方、パスの回し方 等
- どの機材にドアが何個あるか、スライドの出し方は?(SEPに含まれてるかも)
などまあ日常のルーティーンに必要なsafety、順序のエレメントを習います。
*アーム・ディスアームと追うのは、緊急脱出の際にドアを開けたときに自動的にスライドが膨らむかどうかのスイッチの解除方法です。英語でArm=武装する(スライドを設置する)、Disarm=スライド武装解除するという意味です。基本的に離陸直前にアームし、着陸後にディスアームします。理由は飛行中にいつどこで緊急事態になるかわからないので、飛行中はアームにしています。逆に着陸してゲートに無事着けばもう入りませんよね?なのでゲートについてエンジンが止まったらディスアームです。
*キャビンセキュアは、離着陸の際に、お客様、クルーが着席しいて、お客様のカバンや靴などのものをきちんと上の物入れや前の座席の下にあって、通路やドアの邪魔になるものがないということです。また、トイレに人がいない、ギャレー(キッチン)のものが全てきちんとしまわれている、いわゆる離着陸Readyの状態です。離着陸時に飛行機事故の確率が高いので、どの会社も基本的にキャビンセキュアをするのが決まりです。(程度の差こそあれ笑)
すみません、わかりにくいと思うので、用語については今度別記事で説明します。こんなのあるんだーっって感じで頭の片隅においといてください。
4. First Aid (ファーストエイド)
名前からわかると思いますが、機内での急病人が出た際の対応マニュアルです。だいたい5日から1週間強くらいのプログラムが多いです。はいこれも詰め込みです。笑
機内にお医者様や看護師さんをいつも抱えているわけではないので、クルーが最低限の医療知識を持って対応しなくてはいけません。もちろん、お客様の中でそういった医療従事者がいればラッキーですが。
難易度(どれくらい難しいか)は会社によります、いやそれぞれ難しいんですけれども。
また、SEPほどのボリュームはないのですが、外資で英語で習うとちょっと厄介だったりします。
理由は、英語でmedical termがいっぱい出てきちゃうから笑 もうマニュアルめくるたびにこの単語何?っていう辞書の嵐だった時もあります笑
いい加減慣れない医療英語なのに覚える量が半端なかったです。SQ系は、わかんない単語をローカルに聞きまくればなんとかなります。笑
ちなみに、実技と知識両方問われる会社が多いです。やはり医療なので、実技は大事です。履修内容としては、
- CPR、人工呼吸の仕方
- 人間の平均体温、呼吸数、脈拍数
- AEDの使い方
- First Aid kit/ EMK(Emergency Medical Kit) の種類、中身や使い方
- 出血、骨折、捻挫、切断などの外傷の対処法、包帯の巻き方
- 機内で緊急出産があった場合
- 喉にものが詰まった(Chocking)の対処法、子供、大人、幼児向け
- 機内で急病人が出た際の対処法、助け、上司の呼び方
- Medlinkへの連絡の仕方
- 機内でよく起こる病気(気圧の関係で耳が痛い、低酸素症(hypoxia)など
- その他(例えば、盲腸、心筋梗塞、心臓発作、頭痛、吐き気、めまい、胃腸炎、風邪、脳内出血、凍傷、消化不良)などに対する対処法、それぞれの症状の際に与える薬の種類 等
など。一見簡単そうに見えますが、そんなことはないです。。。笑
あと、トレーニングの一環で出産のビデオを見ます(会社による?)。SQ系と中東系の会社で、全く同じビデオを見ました笑。
これがまた非常にリアルで、マンこのどアップから、陣痛から赤ちゃんが生まれて胎盤が出てくるまで20分くらいでダイジェストでとってあるのですが、勉強にはなるのですが結構ぐろいです。
覚悟しておいたほうがいいです笑
5. Glooming & Uniform Fitting
はいこれが、みなさんお待ちかねのグルーミングとユニフォームのクラスになります!これが一番ある意味CAになった実感が湧く瞬間というか、楽しい授業です!!
だって制服貸してくれる友達がいない限り、そのエアラインに入らないときれないユニフォームやっと着れちゃうんですよ?
(まあ一部制服をメルカリ的なので売ってる人いますがね笑)メイクも、そのエアラインの制服やカラーにあったやり方を教えてくれます。
会社によっては超がっつり何日もかけてメイクの基礎からアプライの仕方、アイシャドウのブレンディングの仕方まで教えてくれるところもあれば、(SQ等)、
使っていいメイクの色と種類だけ教えてあとは自分でやってねー!って感じのところとあります。笑
- 基礎化粧品の選び方、肌につけ方
- ファンデーションの種類、アプライの仕方
- チーク、アイシャドウの色(制服に使っていい色)、付け方
- アイライナー、マスカラの色、付け方
- 付けていいピアス、指輪、ブレスレット、ネックレスの種類、色
- つけまつげやエクステはオッケー?か
- カラコン
- 会社基準に準ずる制服にしていい髪型(夜会巻き、お団子、ポニーテール、ボブ、ショートヘア等)
- 髪の毛の色
- 付けていい口紅の色(会社によってはブランドや色版が決まっていることも)
- Off loadポリシー(日焼け、傷、あざ、太り過ぎ等)
- ネイルの色、形、等
制服を着たクルーはやはり統一感を持たせたいので、どこの会社もある程度の色や形は決まっています。
6. Aviation Security
個人的にはこれが一番面白かったというか、興味深かったのですが。
いわゆる、航空業界、航空会社の人が関わるセキュリティー、安全面、治安面について勉強する科目です。だいたい、1、2日程度です。履修内容は、
- ハイジャックの際にどう行動するか
- 通常のフライトのセキュリティースクリーニングについて
- 手錠の掛け方、手錠をかける相手の判別方法
- Boarding の際、(機内にお客様をお迎えする際)気をつけるべきこと
- 爆弾処理の手順、対応
- Unlawful Interferenceとは?
- 過去のハイジャック、テロ事件について事例を学ぶ
- 怪しいお客様がいたらどう対応するか
- お酒を飲みすぎて酔っ払ったお客様にどう対応するか
など、ざっとこんな感じです。ここは(ここも、ですが)社内機密に関わるので詳しくはかけませんが、だいたいこんなイメージだとわかっていただければ幸いです。
結構過去の事故、事件のビデオとかを見れてそれが興味深かったので、私は好きですが、つまんない人には超つまんないらしいです。笑
7. Service
これもみんなお待ちかね、サービストレーニングです。
会社によってはSEPの前にあったり、後にあったりします。が、ここまでくると、CAになった!って実感がわきますね笑 サービスは、SEPに比べてChill(ゆっくりしている、リラックスしている)会社が多い印象です。
- エプロン(あるところ)の付け方
- コーヒーや温かいお飲み物の入れ方、サーブの仕方
- カートの押し方、カートをお客様のどこで止めるか
- サービスハンド(お客様のいる方の手を使ってお食事をサービスする)とクロスハンド(お客様がいない方の手を使ってサービスする、体がねじれてお客様が取りにくいのでよくない)
- ワイン、アルコール等の知識、どこでサーブをやめるべきか、そのサイン
- カートトップ(カートの上に置く飲み物等のセッティング)の作り方
- メニューテイスティング(機内食の味見笑)
- クリアランスの仕方(かたづけ方)
- ギャレーの担当の仕方、カードの準備、引き継ぎの仕方等
- EYでお出しできる飲み物、スナック等
- 食品アレルギーとは?スペシャルミール(アレルギーのある方への特別なお食事)について
ざっーくりこんな感じです。フルサービスに大差はないと思います。
LCCだとこの辺りはあっさりカットされていることもあります。またLCCだと、機内であるいは予約で販売するので食事・お飲み物サービスのプロセスがFSCとは違いますね。
8. Graduation
全てのテストを無事に終えると、無事訓練卒業です!卒業式については以下に書いてあります。
終わり。